子宮内膜症 - 婦人科 よくある質問

Q1 子宮内膜症とは、どのような病気ですか?

子宮内膜は子宮腔表面を覆う粘膜組織です。卵巣からのホルモンの作用で肥厚しますが、妊娠が成立しなかった場合は、剥離した内膜組織は体外へ月経出血として(血液とともに)排出されます。この子宮内膜が子宮腔の表面ではなく、骨盤の腹膜や、卵巣などの中に入り込んでいる場合を子宮内膜症と呼びます。
月経に伴って組織の中に出血するため月経痛が強く、性交痛を訴えるかたもいます。一般のかたには5-10%の頻度でみられるのに対し、不妊症では20-30%にみられ、不妊の原因のひとつと考えられています。

Q2 どうして子宮内膜症になるのですか?

子宮内膜症が発生する原因は、はっきりとは解明されていません。現在言われているのはあくまでも仮説です。
子宮内膜症の発症原因の一つとして、月経血の逆流が関わっていると思われています。月経血の中には剥脱した子宮内膜が含まれていますが、月経血が膣の方へ流れ出ずに子宮から卵管の方へ逆流して腹腔内へ流れ出るときに子宮内膜も運ばれ、その結果、腹腔内に子宮内膜が付着し生育することで子宮内膜症が起こるというのが、現在子宮内膜症の発症原因として最も有力視されている子宮内膜移植説です。もう一つ、体腔上皮化生説があります。腹膜が何らかの原因で子宮内膜に変化し、子宮内膜症になるというものです。前者が有力視されていますが、まだ確定されていません。

Q3 タンポンを使用すると子宮内膜症になりやすいのですか?

タンポンを使用したら月経血の逆流を促すのでは?と考えてしまいますが、タンポンを使用することで月経血の逆流は増えません。したがって、タンポンを使用すると子宮内膜症になりやすいということはありません。

Q4 どんな女性がかかりやすいのですか?

子宮内膜症になりやすい年齢は20代~40代であるといわれています。また、月経周期が短く、月経の期間が長い人のほうが子宮内膜症になりやすいともいわれていますし、遺伝的な要素もあるともいわれています。閉経を迎えると卵巣からのホルモン分泌がなくなり、子宮内膜症の症状も治まってきます。

Q5 子宮内膜症はどのような症状があらわれるのですか?

不妊症、月経困難症、骨盤痛(月経時以外の下腹部痛、腰痛、性交痛、排便痛)などの疼痛が主な症状です。中には、不妊だけでまったく痛みのない人もいますから注意を要します。

Q6 早期発見のポイントはありますか?

子宮内膜症の自覚症状で最も頻度の高いものが、つらい月経痛です。しかも月経の回数を重ねるごとに痛みが強くなっていくのが特徴で、月経のたびに寝込んでしまう人も少なくありません。 病気の進行にともない腰痛や下腹痛、性交痛、排便痛などの訴えも多くみられます。
以前に比べて月経がつらくなってきたと感じたり、遺伝性があるといわれていますのでお母さんや姉妹が子宮内膜症を患ったことがある人はなるべく早く婦人科を受診したほうが良いでしょう。
早期発見は、病気の進行を抑え症状を軽減することに効果的です。

Q7 子宮内膜症はどのように診断しますか?

通常は問診で内膜症の疑いがあると判断した場合、内診にて子宮の後方(ダグラス窩)にしこり(硬結)がないかどうか、圧痛があるかどうか、卵巣がはれていないか(腫大)調べます。内診の時間は1~2分間で特別な苦痛を伴うものではありません。
また,超音波は内膜症が卵巣の内にでき、チョコレート嚢腫とよばれるように血液がたまった状態を診断するのに効果的です。MRIという断層撮影も同様です。 血液検査は補助的な方法ですが,血液中のCA-125という腫瘍マーカーが内膜症では高くなることがあり、このCA-125が高値であれば内膜症がある程度進んだ状態と考えられます。
内膜症の殆どは内診や超音波、血液検査で診断が確定できます。さらに腹腔鏡検査があります。これは腹腔鏡という内視鏡(おへその直下から内視鏡を入れ、骨盤内を観察し、さらには内膜症の部分を取り除いたりすることもできます。)で直接診断する方法です。この方法はお腹の中に内膜症が本当にあるかどうか、あるいは病巣の広がり具合を直接みて診断が可能なことから最も信頼できる方法です。しかし腹腔鏡は通常、入院の上、全身麻酔下に行います。負担が少ない方法ではありません。ですから腹腔鏡が必要な場合は、内膜症がかなり進んでいて薬などの治療では不充分な人、内視鏡をみながらの切除、焼灼などの外科的処置が必要な人でさらに不妊症を伴う人などが対象になります。

Q8 子宮内膜症の治療はどのように行うのですか?

子宮内膜症の治療には、大きく分けると
  1. 手術療法(腹腔鏡手術、開腹手術)
  2. 薬物療法(偽妊娠療法、偽閉経療法)
があり、場合により両者を併用して行います。婦人科治療・手術比較一覧

Q9 手術療法はどのように行われますか?

手術療法には、病巣部のみを除去する方法と子宮・卵巣を含めて全部摘出する方法があります。
  • 保存手術(子宮、卵巣を温存する):基本的に、手術でおこなうのは子宮内膜症の病巣を取り除くことです。また、高周波で子宮内膜症病巣を凝固したり腹腔内を洗浄したりして妊娠をしやすくする場合もあります。卵巣チョコレート嚢胞 に対しては、嚢腫の核出、高周波で焼灼などがおこなわれています。
  • 根治手術:子宮と卵巣を全摘します。子宮内膜症病巣が遺残した場合、約10%(卵巣を温存した場合には50-60%以上)に骨盤痛が残ることがあると言われています。

Q10 薬物療法にはどのようなものがありますか?

薬物療法には、鎮痛剤で痛みを抑える方法、ホルモン剤で病巣部を一時的に縮小させる方法、低用量ピルで月経量を減らす方法があります。 偽妊娠療法とは妊娠すると子宮内膜症が改善することが多いことから始められたもので、黄体ホルモン製剤や低用量ピルなどを服用して、人為的に「妊娠」状態をつくり出す治療法です。
偽閉経療法は薬剤投与によって閉経期同様のホルモン状態にし、治療中のエストロゲンの量を非常に少ないレベルに抑えます。GnRHアナログ療法に使われるGnRHアゴニストは通常6ヶ月間続けて使用しますが、人工的に閉経状態をつくるため、更年期様症状(のぼせ、ほてり、肩こり、発汗、頭痛)などの副作用があります。ダナゾール療法に使われるダナゾールは通常4ヶ月内服します。こちらは男性ホルモンの誘導体なので、ニキビや体重増加などの副作用があります。GnRHアナログ療法とダナゾール療法では月経を止めるため、治療中は子宮内膜症による月経痛や病気の進行は止まります。ただし、治療を中止すると再び月経が始まり、子宮内膜症が進行する可能性はあります。

Q11 子宮内膜症は再発しやすいのですか?

子宮内膜症は女性ホルモンの影響を受けて増殖してゆきます。一時的に生理を止めるような治療(偽閉経療法)やピルを使用する治療(偽妊娠療法)を実施したとしても、治療を終了してホルモンの分泌状態が元のように回復すると、残存した子宮内膜症病変が増殖したり出血を繰り返すようになり、再び悪化することがあります。このような理由から、子宮内膜症は再発を繰り返しやすい疾患といえるでしょう。 手術を受けた後そのまま放置すると、良くなった状態が再び悪化してしまう可能性もあるので、手術後も良い状態を保つため、あるいは再発予防を期待して薬物療法を行うことがあります。黄体ホルモン製剤も子宮内膜症の治療薬として使用されています。黄体ホルモン製剤の種類によっては、子宮内膜症病変に直接の作用があり、手術後のコントロール方法の一つとして期待されています。

Q12 子宮内膜症の人は不妊症になりやすいのですか?

不妊症として治療される方の中に、子宮内膜症の方が多いのは確かです。子宮内膜症が卵管卵巣、子宮、腸管などと癒着を起こしやすく、これが精子や受精卵の通過の妨げになるためだと考えられています。しかし子宮内膜症があると必ず不妊症になるというわけではなく、子宮内膜症があっても妊娠できる方が多くいらしゃいます。

Q13 子宮内膜症だと採卵しにくいと聞きましたが、いかがでしょうか。(不妊治療)

子宮内膜症は、いろいろな場合があって一概にいえません。
採卵しにくいことはないですが、チョコレート嚢胞があれば、吸引しておいた方が、卵の育ちもよく採卵しやすいです。

Q14 チョコレート嚢胞とはどのような病気ですか?

卵巣に病巣を形成した子宮内膜症が進むと、卵巣内に嚢胞を形成します。この嚢胞内に主として月経の時に出血を繰り返すことにより、古い血液がたまったものが子宮内膜症性卵巣嚢胞、すなわち、チョコレート嚢胞です。出血した血液が変色してチョコレート色に見えることから、このように呼ばれています。エストロゲンに依存する疾患であるため、初経から閉経までの生殖可能年齢の女性に発症します。

Q15 スポーツなど、日常生活の中でやってはいけないことはありますか?

症状がつらくて動けないときに無理をする必要はありませんが、運動をしてはいけないということはありません。体調がよいときには、むしろ積極的に体を動かすようにしましょう。スポーツが苦手という方は、ストレッチやヨガなどをしてリラックスすることにより痛みも和らぎます。ゆったりとした気分で過ごしましょう。

Q16 子宮内膜症の人はどういう治療を受けたら妊娠できる可能性があるのか教えてください。

子宮内膜症が不妊を引き起こす原因として、内膜組織によって隣接する臓器同士が癒着してしまい、卵管や卵巣が動きにくくなってしまい、卵子がキャッチできなくなることがあります。また卵巣チョコレート嚢腫になると、卵胞が成熟しにくくなり、正常な卵子の成長と排卵が障害されること、などが挙げられています。治療は鼻から吸入する薬、注射、飲み薬による方法や手術がありますが、薬や注射による治療は4~6ヶ月続ける必要があります。子宮内膜症が不妊症の原因となる場合は、卵巣や卵管などの病状が原因である場合が多いので、薬や手術でそれらの病状を軽減させて妊娠しやすい環境を作ります。腹腔鏡下手術でお腹を切らずに治療できるようになり、患者さんの負担もずいぶんと軽くなっています。それぞれの患者さんの状況に応じて治療方法が選択されますので、産婦人科の医師に相談してみることをお勧めします。

Q17 子宮内膜症による卵巣嚢腫は卵巣癌に関係あるのですか?

月経痛(生理痛)や不妊で発見されることのある子宮内膜症による卵巣嚢腫(チョコレート嚢胞、タール嚢胞)が、卵巣癌と関係あることがわかってきました。チョコレート嚢胞からも、約0.5%~1%の頻度で悪性(卵巣癌)が見つかっています。これは年齢や大きさと関係があります。40歳頃から卵巣癌の発見率が増えてきているため、40歳未満では10㎝以上は卵巣嚢腫摘出(腫れているところだけ取り卵巣は残す)、40歳以上では10㎝以上や急に大きくなる場合は卵巣摘出を勧めています。
またチョコレート嚢胞を持っている人の中には最初は良性であったもの が癌化した(卵巣癌になった)と報告されています。頻度としては多くはありませんが、長い時間がたって癌になる方がいますので、子宮内膜症、特に内膜症による卵巣嚢腫(チョコレート嚢胞)といわれた方は、症状がなくても定期検診を続けることをお勧めします。(子宮癌検診などの時に超音波で 卵巣を診てもらうといいでしょう)